Trip in Southern Ontario -- Part1 Sudbury --

カナダ オンタリオ州南部 サドバリー

サドバリーの位置


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 サドバリーは北アメリカ大陸の5大湖のひとつヒューロン湖の北東部に
あります。 トロントからはおおよそ390km。所要時間は約4時間半程度で移動は自動車、飛行機、列車で行く事が出来ますが、広大な風景を眺めたり、色んなところに露出する岩石を見る場合は自動車がお勧めです。

自動車
(1)Toronto--HWY400--Barrie(2)Barrie--HWY400--ParrySound
(3)ParrySound--HWY69--Sudbury

飛行機
Toronto, Pearson Int'l airport (YYZ)からSudbury air port (YSB) までAir Canada

列車
Toronto Union Station からCanadian National のVIA Trainで。



下の写真は
(左)バリーからパリーサウンドへ向かうHWY400です。 変成岩の固い岩の壁が続いています。
(中央)10億4500万年前のパリーサウンドの片麻岩 
(右)フレンチリバー 右方面がパリーサウンドで左がサドバリー方面です。

HWY400バリーからパリーサウンド ParrySound片麻岩 HWY69フレンチリバー

サドバリーの町

 1856年に鉄道工事で銅が発見され、その後はニッケルの鉱床が見つかって世界的な鉱山の町になりました。
トロント方面から続いたHWY69は、町の南部でHWY17(トランスカナダハイウエイ)と交差しますが、 直進して次の交差点を右折(Paris道路)すると、6kmほどでサドバリー中心部に到着します。 町は隕石孔外側の南東にあり岩が露出した場所が多いのですが、林や湖も多く綺麗な場所です。 町の中心部から東西に伸びるKingsway通りがメインストリートです。 この通りを東へ行けば、空港方面の86号線(FalconBridge通り)とKingsway〜HWY17に道路が分かれています。 西へ行くと道路は144号線となり、隕石孔の中心部のChelmsfordや隕石孔の外周部OnapingやLevackへと続きます。

サドバリーの直前 サドバリーの町 サドバリーの住宅地

Science North サイエンスノース

 サドバリーの南側で80号線の東側 RamseyLakeのそばにあり、 Incoの坑道や植物と蝶の温室、恐竜の骨格模型などを展示しています。ここでは昆虫や動物に触れたり、簡単な実験や顕微鏡でミクロの世界を見ることも出来て
子供から大人まで楽しむ事ができます。

サイエンスノースの建物 サイエンスノースのそばのRamseyLake 顕微鏡 岩石の観察 岩石、鉱物、化石の展示 親子で楽しめる観察室 クジラの骨格

Dynamic Earth/Big Nickel ダイナミックアース

 サドバリーの町の南西部 インコのCopper Cliff North鉱山の敷地内にあり、 鉱山の見学コース、隕石の衝突で出来た鉱床の説明が展示されています。 鉱山の見学コースはヘルメットを被りエレベーターで立坑を降ります。
昔のIncoの坑道を歩いて進みますが、掘削機や鉱石運搬車、構内休憩室などがあり、当時の様子を見ることが出来ます。 途中でガイドの女性の緊張した合図と共に見学者全員が遠くに走り、座り込み、 耳をふさいでダイナマイト爆破の模擬体験をします。 ガイドの表情豊かでユーモアある案内で見学者はとても楽しんでいました。 見学コースは最後には土産店に入るようになっていて、たくさんのお土産を見て帰る仕組みになっているのでした。 ダイナミックアースは小高い丘の上にあり巨大な5セントニッケル硬貨が目印です。 周りにはニッケルを精錬した後の鉱滓が大きな平らな山となって積まれているのがよく見えて 鉱石の膨大な産出量が想像できます。 空高く伸びる煙突はサドバリー郊外からも見えますがトロントへ向かう飛行機からも見える事があります。
ダイナミックアースとサイエンスノース http://dynamicearth.ca/

ニッケル硬貨 ダイナミックアース遠景 見学坑道 鉱山内部 鉱屑の山 精錬後の鉱屑

サドバリー隕石孔

 サドバリー隕石孔 はおよそ18億3600万年前に直径4kmの隕石が衝突してできました。
長さ60km幅30km深さ10km。当初は直径150〜200kmの円形でしたが。楕円形をしているのは地殻変動により変形したものです。

サドバリー隕石孔の地質

隕石孔地質平面図

Superior Province 北西部上部
(隕石孔北西部)〜隕石孔基底部分
衝突以前から存在した花崗岩や片麻岩類
(31〜25億年前)

Footwall Breccia 隕石孔外周部
Suevite (衝撃で破壊された岩屑の角礫岩Brecciaの総称)(18億3600万年前)

Sudbury IgneousComplex
隕石孔底部及び内周部

溶融した岩石が深部から湧き上がり、
隕石孔上部を同心円状に満たしている構造で 地上より10km下部までを満たしています(18億4900万年前)

Creighton Pluton
クレイグトンマグマ深成岩体

(23億年前)



Whitewater Group 隕石孔最内周部分
衝突後しばらくしてから水と共に満たされた堆積岩類
Chelmsford層 Onwatin層 Onaping層(*)で 構成されます(18億3600万年年前)

Houronian SuperiorGroup 南東部
衝突以前から存在した堆積岩、火山岩類
(24〜22億年前)

Grenville Province グレンビル地質区
片麻岩類(11〜13億年前)

隕石孔地質断面図

***(注)Onaping層 Onaping Formation***
 北東部から流れるVermilion River のHigh Falls付近の地層は1965年から隕石衝突後に飛び散り落下した角礫岩と
その1部が溶けた単一の層だと考えれれていましたが、その後の研究で4つの単層であることがわかりました。↓

  ***** 下の写真 左High Falls付近 中央Gray Member 右Black Member 下左SudburyComplex *****

High Falls Gray Member Black Member SudburyBreccia

→4つの単層の上下関係
最下部 Basal Member
下部   Gray Member 溶融し流動したガラス体 写真上中央
中部   Green Member
上部   Black Member 写真上右

OnapingFormation
 OnapingFormationは地球では珍しいものだったためNASAは1971年の夏にアポロ16のクルーを、1972年にはアポロ17のクルーをHighFallエリアに送りました。彼らは地質学的特徴を研究し、月と類似のシャッターコーンや灰色や黄色がかった角礫岩や溶融した岩から、OnapingFormationが隕石孔の特徴をなす事を発見しました。
OnapingFormationの岩の正しい見解は、SudburyIgneousComplexの成因と、局部的な亜鉛、鉛やニッケル、銅の熱水作用による鉱体の解明に非常に重要なものでした。

サドバリー隕石孔の見解
 1964年までサドバリーの盆地状構造は大きな火山クレーターと考えられてきましたが、 1964年R.S.Dietzは直径4kmの巨大な隕石起源であると提唱しました。 彼はFootwallBrecciaの分厚い角礫岩、衝撃を受けた岩の存在、溶融した岩がIgneousComplexを形成した事、 その後クレーターは水と堆積物(WhitewaterGroup)で満たされた事をもとに主張しました。

隕石によるクレーターである証拠について

ShatterCone シャッターコーン
頂点から放射状に条線のある円錐形の岩  隕石の衝突との結びつきでよく知られ、
隕石の衝突で破壊された小さな石粒が岩石にぶつかって出来るものです。
Pseudotachylytes シュードタキライト
ガラス状の岩石 隕石の強大な衝突が岩石を摩擦溶融し、その後に急冷してできる岩石。
Shocked quartz crystals ショックド・クオーツ・クリスタルズ
強力な衝突の圧力が岩石中の石英に衝撃を与え十字形の溝を作ります。溝幅3mm程度

楕円形の隕石孔について

 カナダの他の隕石孔は円形ですが、サドバリー隕石孔は楕円形です。 これはPenokean造山運動(18億年前)によるもので南東部 HouronianSuperiorGroup(堆積岩、火山岩)が隕石孔に押し込まれ円形の隕石孔は楕円形になりました。

サドバリーの鉱山と鉱床

鉱山の位置

 隕石孔外周部FootwallBrecciaや内周部SudburyIgneousComplexの内側に鉱山が多く 角礫岩体に包まれる形で多くの鉱体が存在し、露天堀や深い立坑からの採掘をしています。(注)図はFootWall(@隕石孔外周部)

鉱床地区断面図 サドバリーでは主にNickel ニッケルとCopper銅が採掘されますが他にも以下のような金属や生産物あります。

主な鉱山会社と鉱物、生産物

Inco InternationalNickelCompany
ニッケル、銅、コバルト、金、銀、白金族、硫酸、テルル、
二酸化硫黄
Falconbridge Ltd.
ニッケル、銅、コバルト、金、銀、白金族、硫酸
FirstNickel Inc.
ニッケル、銅、コバルト、金、銀、白金族、硫酸
FNXMiningCompany Inc./Dynatec Corp.
ニッケル、銅、白金族




ニッケル鉱石

ニッケル鉱石  Chalcopyrite=黄銅鉱CuFeS2(硫化銅)、Pentlandite=ペントランド鉱(Fe,Ni)9S8(硫化ニッケル、硫化鉄)、Pyrrhotite=磁硫鉄鉱FeS(硫化鉄)で構成されています。 これは隕石の衝撃が引き金となり硫黄を多く含んだマグマから生成されました。 19世紀後半までニッケルは銅鉱石の精錬には邪魔なものと考えられていましたが、 1891年Orford Copper Company が鉱石からニッケルを取り出す事に成功し 1902年にはIncoが量産化しました。








後書き

 隕石衝突の痕跡は世界中で多く見られますが38億〜46億年前の時期に集中していました。それは太陽系が他の惑星系のそばを通った時期であり、太陽系の外縁部の小惑星帯に引力の影響を与えました。互いにぶつかったり移動を始めた小惑星は太陽に向いました。多くの小惑星は地球に衝突する前には大きな重力を持つ木星にぶつかりましたが、木星の影響をあまり受けなかった小惑星は地球にぶつかって生命の源になる物質をもたらしたり、繁栄した生物を絶滅させたり、衝突による地殻の溶融で新たな金属資源をつくりました。

 左の映像はコッパークリフノースです。ダイナミックアースから撮影しましたが、広大なIncoの敷地に巨大な煙突や膨大な量の精錬後の鉱石の山が見えます。ニッケルはステンレス材料に3〜15%の割合で使われており、50円や100円硬貨は銅とニッケルの合金です。 サドバリーのニッケルは世界中のステンレス生産に大きな役目を担ったことでも有名です。


 サドバリーの町と近郊は道路の左右に多くの露頭がありましたが、車を止めるには危険でした。それでも車窓から見る地層断面は飽きる事のない表情をして、広く深い歴史を物語っていました。サドバリーに限らずカナダは道路際の露頭が多く、褶曲や断層、化石層などが続く場所があります。 そんな場所を地質的な事を中心にこれからも紹介できたらと思っています。

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